前回の記事では、私が発達障がいを持つわが子(10)が3歳の時からスマホやタブレット端末で動画を見させている理由について説明しました。
スマホは、育児の負担を軽くしてくれるありがたい存在。
一方、わたしたち親としては、子どもが「スマホ漬け」になってしまうことで、興味や関心が動画の中だけにとどまってしまうのではないかという不安もあります。
前編では、子どもが見る動画の内容を親子のコミュニケーションにつなげたり、子どもに寄り添いつつ興味をスマホの外の世界に移したりすることを提案しました
では、具体的にどのようにスマホを活用すればいいのでしょうか?
今回は、自閉症の特性を持つ子どもがいるわが家の事例をご紹介します。
発達障がいを持つ子どもとスマホ動画を使ってコミュニケーションを図るコツ
前編では、発達障がいのある子どもがいる親が不安を持つ背景として、「子どもがスマホに夢中になることで、他人との会話がなくなってしまうのではないか」という考えがあることをお話ししました。
この考えに対し、わが家では子どもが見ている動画を話題にして、親から子どもに話しかけることでコミュニケーションを増やしています。
みなさんが、このようなコミュニケーションを行ううえで気をつけてほしいのは、「会話が続くような質問をする」ことです。
例えば子どもが電車好きな場合、「電車好きなの?」と聞いたところで、「うん。」と返されて会話が終わってしまいます。
「どうしてこの電車が好きなの?」のように「はい/いいえ」ではなく、子どもが自由に答えられる形の質問をしましょう。
ただ、このような「どうして?(Why)」や「どうやって?(How)」を使った質問は少し難易度が高く、子どもが答えに屈してしまう場合があります。
そういった質問が難しい場合は、「この電車はなんていう名前?」「どこで乗ったことがあるっけ?」といった質問をし、なるべく会話のつながりを意識して話しかけてみるといいと思います。
また、子どもが見ている動画を少し観察していると、親御さんもそれについて詳しくなっていきます。
楽しみながら子どもの関心を一緒に学んでみてください。
私も、息子と一緒に新幹線の動画を見ているうちに、会話の中で「ひかり N700系(車両タイプ)」や東海道新幹線の「ドクターイエロー(点検用新幹線車両)」といった言葉が自然と出てくるようになっていました。
あと、余談ですが、私の息子は虫も好きである一方、私は虫が苦手なのでなるべく電車を話題にするようにしています。
それでも、息子とは毎日のコミュニケーションがある程度確保できています。
無理をしてでも子どもに話を合わせにいく必要はなく、親がより興味を向けやすいテーマを選んで話しましょう。
発達障がいのある子どもの興味をスマホの外の世界に向けさせる方法
前編では、親が「動画を繰り返し見させることで、その内容が子どもに刷り込まれてしまう」という不安も持っていることを説明しました。
また、このような不安に対しては、「子どもに寄り添いながら、関心を動画の中から外の世界に目を向けさせることが大事」とお話ししました。
そのためには、子どもを外に連れ出すのが一番。
自閉症の特性があるわが子は電車好きなので、たまに駅に連れていき電車に乗せます。
外に連れ出すことのメリットは、その話題に関連する言葉もあわせてコミュニケーションに使えること。
「新幹線」の場合、それのみならず「○○駅(例:品川駅)」や「地図」といった言葉も出てきて、実生活に役立つ練習もできます。
さらに、駅に行くための乗り換え方法を子どもと一緒に調べると、コミュニケーションの幅が広がります。
加えて、乗り換え案内アプリで新幹線駅までのルートを探してみたり、電車賃を計算したりするのもいいでしょう。
もちろん、鉄道博物館に行ったり、キッザニアで運転士の体験をしたりするのもおすすめです。
また、上記「発達障がいを持つ子どもとスマホ動画を使ってコミュニケーションを図るコツ」でも説明しましたが、親の苦にならない範囲で行うことが大事。
遠出そのものが面倒だと思う親御さんもいらっしゃるはず。
その場合、近所の線路沿いを散歩し、通過する電車の運転士さんに手を振ってみるだけでもオッケー。
線路沿いまで歩いて片道15分かかるとすれば、往復30分も子どもをスマホの世界から切り離せたことになります。
もし家族の中で育児に手が回らないのであれば、ベビーシッターに依頼して子どもを外出させるのもいいと思います。(※)
子どもが帰宅した時は、その日やったことを順を追って聞いてみましょう。
発達障がいを持つ子どもの「スマホ漬け」が止まらない場合は?
子どものスマホの使い過ぎを防ぐためには、まず「スマホに触れる時間を決める」ことが大事。
そのためには、タイマーを使いましょう。
最初にやっていただきたいのが、子どもに合ったタイマー終了時の「アラーム音」を探すこと。
発達障がいの特性がある子どもは、そうでない子ども以上に場面の切り替えが苦手です。
みなさんがお持ちのスマホでいいので、どのアラーム音を使うと子どもの気持ちが切り替えられるようになるのか試してみるといいでしょう。
息子の場合、アメリカの学校によくある授業開始時の「ジージージー」というベル音が効果的らしく、学校の先生にお願いして録音してもらいました。
また、時間の感覚がつかみづらいという発達障がいの特性を踏まえ、残り時間が可視化できるタイマーを使ってみるのもいいです。
アナログタイプの置時計で、残り時間の部分が赤く表示されています。
気になる方は、インターネットで「発達障がい タイマー」と検索してみましょう。
今回は、発達障がいの特性を持つ子どもに対するスマホやタブレットの活用方法をご紹介しました。
親のみなさんが、スマホなどの動画を話題にしてお子さんとコミュニケーションをとったり、いっしょに外出したりする機会が増えるきっかけになればうれしいです。
(※)ベビーシッターを利用するのに不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。
ご検討の際には、全国保育サービス協会(http://www.acsa.jp/)の加盟会社リストに載っている事業者から選んでみてください。